手作り神話

2004年12月16日
 むかしむかし、あるところに世界に名をとどろかせる大泥棒がいました。その大泥棒は冬になるとみんなの家の煙突から侵入して家のあらゆるものを盗んでいくのでした。
 ある日、その大泥棒はいつものように仕事に出かけました。場所は豪邸です。煙突から軽々と侵入した大泥棒はドキっとしました。人の気配がしたからです。こんな時間に起きてるのか、とこっそり奥の方を覗くとそこには長い茶髪の女の子がベッドで横になりながら脇のロウソクをじっと眺めています。その瞳に吸い込まれるように大泥棒は仕事を忘れその少女に近づいていきました。少女は怪しい格好をしている大きな男に気づいたようで驚いた様子ですが大泥棒は少女に言葉をかけます。

「きみはこんな遅くまで何をしているんだい?」

「今日は私の誕生日なの。でもパパもママも忙しくしているし、私の体の具合も悪いから誰もお祝いしてくれないの。」

なんともさびしげな瞳の少女に大泥棒は心を打たれました。

「じゃあおじさんが君のお誕生日をお祝いしてあげよう。」

「えっ本当なの?」

「あぁもちろんだよ。その代わり来年一年間ずっとよい子にしていることだ。そうしたらプレゼントをあげるよ。」

「うんわかった。わたし絶対よいこでいるからね。おじさんのこと来年まで待つよ。」

少女は今日一番の笑顔でそう答えました。



 一年後、大泥棒は今まで自分が盗んできたあらゆる品物全てを携えてあの家へやってきました。えんとつをくぐりぬけ少女の部屋へ向かうと、そこに少女の姿はなく、溶けかけたロウソクだけが冷たく固まって転がっていたのです。
 話によると、両親の行っていた会社が倒産してからバタバタとしている間に少女は親戚に引き取られ今は行方知れずだというのです。大泥棒はずっと悲しみに明け暮れていました。しかし、一つの決意にいたります。

「きっとどこかにいる名前もわからないキミへ、このプレゼントがいつか届くように私は世界中の人間にプレゼントを配っていこう。」



少女の誕生日が12月25日だったというのは偶然ではないのかもしれません。

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