1月7日

 あれからなにも変化はなかった。普通にコウジは生活を消化しタカヒロは笑っていた。ただ、一つだけ変化があるとすればハルカの存在を消そうと努めていたことかもしれない。ハルカが転校して以来コウジは時々ものすごい絶望感を覚える。ハルカの体の周りから出てくるなにか翳のようなものに押しつぶされそうな感覚になる。もちろん彼女はクラスにもすぐなじみほかの人間はそんなことこれっぽっちも思わないかもしれないが、少なくとも一人の男子生徒はハルカをクラスメイトとして迎え入れていなかった。
 新学期が始まったクラスではみな冬休みの思い出話をおもいおもいに語っていた。担任も初めのうちは話に参加していたがやがて話題を三学期の方面へ転換させた。

「三学期はすぐ終わってしまうからもうすぐお別れだな。そうそう、お別れといえば2学期から一緒に生活をしたハルカさんは冬休み中にまた別の場所に引越しをしてしまったんだ。」

クラス中の反応は薄かった。みんな知っていたのだろうか。座席を確認しようと右に目をやる前にタカヒロがしゃべりかけてきた。

「なにきょろきょろしてるのサァ。知らなかったサァ?ハルカはどこかからだが悪いからいい病院がある場所を転々としているみたいサァ。」

コウジはハルカが転校してきたときのあのしゃがれた声を思い出した。やはり病気だったのか、と思うと同時にコウジは胸がすっと軽くなった。彼女がいなくなった安堵感か何かはわからないが、久々に味わった爽快感である。しかし、ただ軽いのではない、何かここにとどまっていてはいけないようなソワソワした気持ちにも駆られた。
 

1月8日

コウジは驚いた。昨日の事実と重なった部分もあるかもしれないが再びコウジは胸を衝かれるような思いをした。それは学校が終わって家に帰ってからのことである。

「コウジ、手紙が来てるわよ。あんたになんて珍しいわね〜。」

見ると、本当に自分宛に手紙が来ていた。部屋に戻り封を開けると細い線の字でびっしり便箋5枚に手紙が書かれていた。ハルカだった。

手紙の中身を見たコウジは手早く支度を整え一言母親に

「ちょっと出かけてくる。」

と言って家を出た。走って、走って、やっと胸の鼓動と自分の体がぴったり重なったような気がした。それくらい今のコウジの胸はハルカを求めていた。【続く】

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